レッスン3

主要なSpot Gridパラメータの説明

スポットグリッドボットの成否は、各種パラメーターの設定に大きく左右されます。取引ペアの選択、価格レンジ、グリッド数、投資金額、トレーリンググリッドの設定、TP/SLの設定など、10項目以上の要素が含まれます。これらの要素はすべて、ボットのリスクエクスポージャーや利益効率に直接影響を及ぼします。特に、グリッドタイプ(算術型または幾何型)および各グリッドごとのROIは、トレーダーが最も重視すべき重要なポイントです。

1. 取引ペアの選択

  • 定義:グリッド取引に使用する取引ペアを選択します(例:BTC/USDT、ETH/USDT、SOL/USDT)。
  • 重要性:選択したペアがボット運用のベースとなり、次のポイントに影響します。

  • ボラティリティ:レンジ内での価格変動が大きいほど売買回数が増え、利益チャンスもリスクも高まります。一方、極端なボラティリティはレンジを急速に突破するリスクとなります。

  • 流動性:流動性が低い場合、注文未約定や大きなスリッページが生じやすく、想定利益が減少する恐れがあります。
  • トレンド:強いトレンドを持つ銘柄はレンジを抜けやすく、一方向のみのポジションとなってボットが機能しなくなる場合があります。
  • ファンダメンタルズ/個人の嗜好:銘柄の長期的な展望や信頼度も選定の判断材料となります。

2. 価格レンジ:

  • 定義:グリッドボットが稼働する上下限となる価格レンジ(最小価格と最大価格)を設定します。
  • 重要性:このレンジがグリッド運用の範囲を定めるコア設定です。

  • 設定基準:テクニカル分析(サポート・レジスタンス、水準レンジ)、過去の価格変動幅、将来の価格予測などに基づいて設計します。

  • リスク・リターンのバランス:レンジ幅が広いほど大きな変動にも耐えやすく、価格突破が起こりにくくなりますが、同じグリッド数の場合は1グリッドあたりのROIや資本効率が下がります。逆にレンジを狭くすると利益効率は上がりますが、価格突破のリスクも高まります。
  • レンジ突破リスク:価格が上限を超えた場合、全保有資産が売却され上昇トレンドでの利益機会を逃す恐れがあります。逆に下限を下回ると資金が使い切られ、さらなる下落リスクに晒されます。

3. グリッド数:

  • 定義:設定した価格レンジ内に配置するグリッドの数。各グリッドは発注および約定の価格レベルです。
  • 重要性:価格レンジとともに、グリッドの密度や1グリッドあたりの利益額を決定する指標です。

  • グリッドの密度:グリッド数が多いと細かな価格変動も拾いやすく、約定の機会が増えます。ただし1取引あたりの利益は小さくなり、全グリッドを埋めるための資金も多くなります。

  • 1グリッドあたりの利益:グリッド数が少ない場合は1回あたりの利益は大きいものの取引機会が減少します。
  • 必要投資額:総投資額が同じ場合は、グリッド数が1グリッドあたりの資金配分量を決定します。

4. 算術グリッド:

  • 定義:各グリッド間の価格差を一定に設定する方式です。例:100〜200 USDTレンジでグリッド数10の場合、1グリッドごとの差は(200−100)÷(10−1) ≈ 11.11 USDTとなり、グリッド価格は100、111.11、122.22、…、200となります。
  • 特徴:

  • 1グリッドあたりの絶対利益は一定(手数料を除く)となります。

  • 低価格帯ではグリッド密度が高く(同額の価格差が大きな割合を占める)、高価格帯では疎になります(割合が小さくなる)。
  • 適用例:価格変動が安定的な場合や、1取引あたりの確定利益を重視する場面で有効です。

5. 等比グリッド

  • 定義:各グリッド間の価格比率(パーセンテージ)を一定に設定する方式です。例:100〜200 USDTレンジで10グリッドの場合、各グリッドの比率係数は(200÷100)^(1÷(10−1)) ≈ 1.0801(比率約8.01%)となり、グリッド価格は100、100×1.0801 ≈ 108.01、108.01×1.0801 ≈ 116.64、…、200となります。
  • 特徴:

  • 各グリッド取引で得られるROI(パーセンテージ)が一定となります(1グリッドあたりのROI)。

  • 低価格帯ではグリッド間隔が広く(同一比率で価格幅が小さく)、高価格帯ではグリッド間隔が狭くなります(同一比率で価格幅が広くなる)。
  • 金融資産の価格変動特性(パーセンテージ変動型)と親和性が高い方式です。
  • 適用例:価格変動が比較的安定している場合、もしくは取引ごとの利回り(ROI)の一定性を重視したい場合に有効です。

6. 1グリッドあたりROI:

  • 定義:
  • 算術グリッド:1グリッドあたりROIは、グリッド間の価格差が買値に対する比率(パーセンテージ)で表されます。1グリッドあたりROI=(グリッド価格差÷買値)×100%。低価格帯ほど高く、高価格帯ほど低下します。
  • 等比グリッド:1グリッドあたりROIは固定のパーセンテージとして事前に設定され、すべてのグリッド間で同一です。
  • 重要性:各「安値買い・高値売り」成立ごとの相対リターン(手数料除く)を測る指標であり、グリッドボット効率の主要評価指標の一つです。通常は手数料をカバーし、十分な利益を目指すROI値を設定します。

7. 投資額:

  • 定義:このグリッドボットに投入する資金総額(通常は見積通貨建て、例:USDT)を指します。
  • 重要性:主に以下に直接影響します。

  • グリッドの規模やボットの稼働キャパシティ。

  • 各グリッド注文に配分される資金は、おおよそ総額÷(グリッド数×2)です(買い注文と売り注文を同時に出すため)。実際の使用資金量は変動します。
  • 戦略全体の潜在利益とリスクエクスポージャー。

8. 最低投資額:

  • 定義:取引所やボットプラットフォームが定める最小注文数量または最小取引金額です。
  • 重要性:
  • 実現可否:総額およびグリッド数から自動計算された1グリッドあたりの投資金額が当該最低金額を上回る必要があります。下回る場合はボットの作成ができなかったり、一部グリッドへの注文が発注できなくなります。
  • グリッド設計への影響:特定の総資金の下でグリッド数の上限が制限され、少額資金利用者は高額コインのグリッド分配量に応じて取引対象が絞られることになります。

9. トレーリンググリッド:

  • 定義:価格がグリッドレンジの上限または下限に到達した際、ボットがグリッド全体のレンジ自体を一定幅(例:半分もしくは1グリッド分)上下方向に自動スライドさせる上級機能です。レンジ突破時にも運用を継続します。
  • 重要性:
  • トレンド適応:明確なトレンド発生時に一方向への早期離脱や過剰な買い付けを防ぎつつ、トレンドを追いかけて利益獲得を図ります。
  • リスク:トレンド転換時は、スライドしたレンジが不利な位置(例:上方スライド直後の下落で高値圏に資産が取り残される等)となり、運用の難易度とリスクが高まります。

10. 開始条件:

  • 定義:ボット開始時に注文をどのように用意するかを定めます。
  • 主要選択肢:
  • 即時開始(現時点価格で):現状レートを基準にし、上側に売り注文・下側に買い注文を同時に配置します。
  • 価格がレンジ内に戻るまで待機:現時点で価格がレンジ外(多くは上方)にある場合は、レンジ内に戻るまで待機し発注、開始直後の高値つかみを回避します。
  • 重要性:ボットの初期参入コストや運用開始時のポジションを決める要素です。

11. 終了条件:

  • 定義:ボットが自動停止する条件です。
  • 代表的な例:
  • 価格レンジ突破:設定した上限または下限を価格が到達・突破した場合にボット運用を終了します。最も一般的な終了条件です。
  • 目標利益達成:運用利益が事前設定の金額に達すると停止します。
  • 指定運用期間終了:設定した運用期間が過ぎた時点で自動停止します。
  • 手動停止:ユーザーによる即時停止操作。
  • 重要性:リスク(ストップロス)管理や利益確定の観点から最重要の条件設定です。

12. 利確・損切価格:

  • 定義:
  • 利確価格:ボット運用中に最新価格がこの水準に到達すると、保有するベース通貨を即座にすべて売却し、利益を確定させて運用を終了します。通常はグリッド上限より高い水準に設定します。
  • 損切価格:ボット運用中に最新価格がこの水準に到達すると、保有ベース通貨をすべて売却して損失を限定し、運用を終了します。通常はグリッド下限より低い水準に設定します。
  • 重要性:レンジ突破のみに頼らない早期決済によって利益の保護・損失の制限を図る仕組みで、価格が明瞭なトレンドを示す局面での補完的なリスク管理機能です。

13. スリッページ管理:

  • 定義:グリッド注文時に指値注文を使って価格有利性を狙うか(その分約定遅延リスクが発生)を管理する機能です。
  • 選択肢:
  • 有効:買い注文はグリッド価格より低い水準、売り注文は高い水準に指値を出し、より有利な価格での約定を狙いますが、注文が即時に成立しない場合もあります。
  • 無効:常にグリッドライン上の価格で注文を出すため、流動性が良好な場合は約定確率が高まります。
  • 重要性:執行価格を微調整して約定価格最適化を図ることができ、流動性の高い市場では有効化により優位性が生じやすく、流動性が低いか急変動相場では無効化により確実な注文成立を目指せます。

14. グリッドサイズ進行:

  • 定義:価格下落時にグリッドごとの購入量(または注文数)を増やし、価格上昇時にはグリッドごとの売却量を減少させる手法です。通称「動的ポジション管理」や「ピラミッディング/逆ピラミッディング」方式とも呼ばれます。
  • 重要性:
  • コスト低減:下落時に積極的に買い増しすることで平均保有コストを下げられます。
  • 回復利益の増大:下落後の反発時は、安値で多く保有した分だけ利益に大きく寄与します。
  • リスク:下落が長引く場合は急激に資金を消耗し、損失も大きくなり得るため、リスク耐性と資産信頼感がより強く求められます。ボットリスクの上昇要因となります。

15. HODLモード:

  • 定義:グリッドで得られた利益分(見積通貨建て)のみを売却し、購入元本であるベース通貨は保有し続ける方式です。業界では「元本維持型グリッド」「利益収穫型」とも呼ばれます。
  • 重要性:
  • 主目的:頻繁な取引による長期的な値上がり益の喪失を回避しつつ、ボラティリティから見積通貨建て利益を得て、常に一定量のターゲットコイン(ベースポジション)を保有し続けられます。
  • 最適な利用場面:コインの長期成長を期待しつつ短・中期的な価格変動による追加リターンも狙いたい場合に最適です。
  • 通常モードとの違い:標準グリッドはグリッドで得たコイン(元本+利益)を都度すべて売却します。

16. 利益再投資:

  • 定義:ボット運用中に発生した利益(見積通貨分)を自動で再投資し、後続注文の規模を拡大するかどうかを設定するものです。
  • 重要性:
  • 複利成長:利益再投資により理論上は収益の成長速度が加速(複利効果)します。
  • 規模拡張:利益が蓄積されるにつれ、ボットの運用規模も自然に拡大します。
  • リスク:ドローダウンが発生した場合、再投資済み利益も損失の対象となって下落幅が大きくなる恐れがあります。運用成績や市場状況に応じて有効化を検討してください。

17. 終了時のコイン売却:

  • 定義:運用停止時(レンジ突破、利確・損切、手動終了など)にアカウントに残ったベース通貨(コイン)をどのように扱うかの設定です。
  • 主な選択肢:
  • はい:保有中のベース通貨をすべて市場価格で売却し、見積通貨(例:USDT)へ自動換金します。最終残高は見積通貨のみとなります。
  • いいえ:何もせず、アカウント内の見積通貨やターゲットコイン(ベース通貨)がそのまま保持されます。
  • 重要性:ボット運用終了後の資産構成方針が決まります。
  • 売却(はい):最終損益を見積通貨で確定し、完全にポジションから撤退する方法で、弱気相場や損切、資金引き出し時などに有効です。
  • 非売却(いいえ):ベース通貨の長期成長期待や手動運用継続、他ボット移行等を想定する場合に利用されます。強気相場で上限突破による利確時も多く選ばれます。

まとめ・重要な検討ポイント:

  • ボラティリティはグリッド戦略の生命線:価格変動がなければグリッド取引は発生せず、利益も生み出せません。適度なボラティリティ銘柄の選定と妥当なレンジ設定が極めて重要です。
  • 価格レンジ設定が戦略の基盤:選定レンジが運用余裕度・適応力を決定します。狭過ぎると突破リスク、広過ぎると効率低下。テクニカル分析や相場予測に基づき適切な設定が不可欠です。
  • グリッド密度と1グリッド利益のトレードオフ:グリッド数や方式(算術・等比)の選択が価格変動捕捉力と取引単位ごとの利益水準を左右します。取引頻度と1回あたり利益のバランス設計が重要です。
  • 資金管理の徹底:投資額、グリッドサイズ進行、利益再投資の設計がリスクコントロールと収益性の要となります。必ず自身のリスク許容度に応じて調整してください。
  • 高度オプションは諸刃の剣:トレーリンググリッドやグリッドサイズ進行などの上級機能は、適切に使えば運用効率を高めますが、同時にリスクや運用難易度も増加します。初心者は慎重な設定が必須です。
  • 出口戦略が不可欠:終了条件、利確・損切価格、終了時コイン売却はリスク管理・利益確保の最終防衛です。必ず明確な設定を行いましょう。
  • バックテストと実戦運用の徹底:運用前に過去データでパラメーター組み合わせのパフォーマンス(利益、最大ドローダウン、突破頻度など)を必ず検証し、実運用初期は少額でテストすることを推奨します。

これら各パラメーターを理解し、適切に設定・調整することがスポットグリッドボット運用成功の鍵です。万能な設定は存在しないため、市場環境や目標に応じて最適化してください。

免責事項
* 暗号資産投資には重大なリスクが伴います。注意して進めてください。このコースは投資アドバイスを目的としたものではありません。
※ このコースはGate Learnに参加しているメンバーが作成したものです。作成者が共有した意見はGate Learnを代表するものではありません。